暑い夏を全力で駆け抜けるような、自分も陸上部に入部したかのような感覚を味わえる作品だった。走るときの身体感覚だけでなく、グラウンドの色や音、空気の匂いまで伝わってくるようで、読んでいる間はその世界にすっかり入り込んでいた。
これまで青春小説はあまり自分に合わないと思っていたが、単に自分に合う作品と出会えていなかったのだと感じた。文章は平易で読みやすい一方、部活動に打ち込む熱や、高校生らしい青さ、爽やかさ、甘酸っぱさがしっかりと残る。主人公を中心に据えながらも、競技そのものや周囲の人々との関係が物語に厚みを与えており、続きが気になって読むこと自体がうれしくなる感覚は久しぶりだった。高校で運動部に入らなかった自分の中に残っていた心残りまで、少し吹き飛ばしてくれるような疾走感のある一冊だった。