史実を土台にしながら、現代の自分でも入り込みやすい人物像と状況で描かれているのが印象的だった。囲碁、数学、天文学、地学といった分野がそれぞれ独立して存在するのではなく、達成したい目的が先にあり、そのために必要な知識を得ていく。学問の区分そのものが意味を失っていくような、その知的な営みがとても面白い。

登場人物もそれぞれに個性があり、善意を感じる人物が多い。人間関係や政治的な駆け引きを過度に前面へ出さないことも、読みやすさにつながっていたように思う。一方で、主人公が若いからこそ、時間の経過とともに出会った人々との別れも訪れる。その積み重ねを受け止めながら成長していく姿には、静かに残るものがあった。歴史小説でありながら、知ることや学ぶことそのものへの興味を強く刺激される一冊だった。