親の愛や家族愛という、語り尽くすことの難しいものを、自伝的な文章を通して描いた作品だった。物語が向かう先はある程度見えているものの、そこまでに積み重ねられる著者の半生があるからこそ、単純な「感動」の一言では片づけられない読後感が残る。
一方で、個人的には一人の人生を長く追う形式にあまり面白さを見いだせず、中盤までは作業的に読み進めている感覚もあった。ただ、家族同士の距離や、不安定でありながら簡単には切れない関係性を十分に理解したうえで後半へ進むと、それまでの積み重ねが確かな重みを持ち始める。感動を強く押し出す作品というより、一人の人間が生きてきた時間の熱が文章を通して伝わってくる小説だった。読む人自身の経験と重なる部分によって、受け取り方が大きく変わる作品だと思う。