夜を通してひたすら歩くという、日常から少し離れた体験を、自分も実際に味わったかのように感じられる作品だった。初めは理由もなく浮き立つような空気があり、歩き続けるうちに疲労が積み重なり、会話が減っていく。その変化が足の痛みや心の動きとともに細かく描かれており、読み終えたときには登場人物たちと一緒に歩いてきたような実感が残った。
それぞれの人物が抱えているものが徐々に輪郭を持ち始める展開には、ミステリーを読むような引力がある。一方で、事情が見えてきてからは、若い登場人物たちが自分や他者の感情とどう向き合うかが物語の中心になっていく。ともすれば重くなりそうな題材を、読みやすい青春劇としてまとめながら、その場を少し離れたところから見守らせてくれる書き口が心地よかった。青春小説をやや避けていた自分に、もう少し読んでみたいと思わせてくれた一冊でもある。